「なぁ。お前は何者なんだ? なんで俺の妹の名前を……」
「ボクにだってわからないことを、お兄ちゃんに答えられるわけないじゃん」
寮へ戻ると、ボクたちを待ち構えていた風のお兄ちゃんに間もなく捕まってしまう。もっとも呼び止められたのは美少年系美少女として校内でも名高い透ちゃんの方じゃなくて、ボクだけだったみたいだけどね。もう少しお兄ちゃんも同世代の女子に関心持った方がいいと思うんだけど、どうかな?
「そんなの答えになってるのかよ? お前はもしかして……」
「お兄ちゃんの言いたいことは大体想像つくけど、だから言ってるじゃん。これはボクにだってわからないんだよ。それよりお兄ちゃん。いつも胸につけてたペンダントを最近見ないけど、あれどうしたの?」
その質問がボクからお兄ちゃんへの答え。高校に入ってしばらくして、あのペンダントを見なくなった。
「あれは…………もう何かが、いないと思ったから」
お兄ちゃんのその答えもきっと正解で、その言葉に全てが詰まっているのだとボクも思う。互いの答えが一致したことを確認すると、お兄ちゃんはそそくさと逃げるように去ってしまった。少し顔を赤らめていたように見えたのは、ボクの思い過ごしかも知れないけど。
「言われてみると、最近確かにあのペンダントをつけてる様子はないですわね」
「ペンダント……?」
だけど透ちゃんだけは相変わらずで、お兄ちゃんの変化に気づいてもなかったようだ。まぁお兄ちゃんがペンダントを身につけなくなったのは高校へ入って間もない頃のことだし、その頃の透ちゃんは全然余裕がなかっただろうから。
「ちょっとおねえ様! あのイケメン君を本気で狙ってるのでしたら、もう少しちゃんと寄り添わないとダメですよ!!」
「だからそういう話は今日はどうでもよくて……」
「どうでもいいことなんてありゃしません! おねえ様がそんな態度だからいつになっても何も進展しないんじゃないですか!!」
「ごめん。やっぱし今日は貴女を追い出してもいいかな……?」
そんなことは当然透ちゃんも自覚している。透ちゃんが本気でお兄ちゃんを狙っているのかはさておき、同じ年の異性として自分の近くにいる存在、その人の役に立てるのなら精一杯力になりたいと思える存在。だって、それが透ちゃんの初めてなんだろうからね。
……ところで突然現れたこの人、誰だったっけ?
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