「隼斗は私がアイドルになることを後押しするんだ。随分と変わり身が早いのね?」
「別にそうは言ってない」
もやもやする。ずっとこれの繰り返し。何が言いたいのかさっぱりわからない。
「さっきからそう言ってるじゃない! この話に関係のない碧ちゃんまで巻き込んで」
「彼女にはここにいてもらってるだけだ。遥華と俺だけでは話もまとまらなそうだし」
「私のせいだって言うの? そんなのただの言い逃れじゃん!」
「そもそも先にアイドルやるって言い出したのは遥華の方だろ」
「そんなこと言ってるんじゃない! 隼斗が私のこと……」
隼斗は私のことを全然信用してくれていない。
それを口に出してしまったら、負けを認めたことになる。
私がアイドルになるというのも隼斗への反発心に対する結果。正解かさえもわからない。
本当は隼斗に止めてほしいだけかもしれない。
ただの願望で、ただの私の我儘。
私はどこまで図々しい人間なのだろう。
「ねぇ。早くアイドル始めないの? あたしはそのためにここに来たのだけど」
私と隼斗の空虚な硬直を打ち払ったのは、間にいたはずの碧ちゃんでさえなかった。
碧ちゃんはさっきからずっと自分のスマホと睨めっこしている。たまにちょびちょび隼斗が淹れたコーヒーを口につける姿は、ある意味私達を信用してくれてる証かもしれないけど。
「そもそもあなた……誰よ?」
だからこそ、彼女は一体誰なのだろう。
私との唯一の接点を探すなら、私と同じ学校の制服を着ているってことくらいか。