昨夜は静かな雨だった。雨の雫がこびりつき、ピンク色の花弁は僅かに光り輝いていた。
同時に雫の重みのせいで、儚く散るその日も少し早まってしまったかもしれない。
……いや、そんなの愚問だ。所詮は生まれた時から決められた運命でしかないのだから。
薄水色の空に向かって、腕をぐっと伸ばしてみる。届くはずもない右手を朝日に晒した。
微かに残る雨の匂いは身体の筋肉を縮こませ、何もできない俺に諦めることを強要する。
もうここには何も残っていない。視線は自ずと足元の地面へと落ちていった。
「あれ? 先客がいる。ここはあたしのヒミツの場所だったはずなのになぁ〜」
美しく研ぎ澄まされた声に驚かされ、俺ははっと後ろを振り返った。そこにあったのは、俺と同じ茜色のリボンを付けた女子高生の姿だ。茜色ということは俺と同じ学年、今日この学校へ入学したばかりということだろう。この場所は俺も今朝見つけたばかりの裏庭。滅多に人が通る気配もなくて、人目につくこともほぼありえないって、そう思っていたはずなのに。
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