しかつきかふぇ

ちょっとした休憩時間に

エーデルシュティメ 004『小さな来訪者と偽りの世界』

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 幸いなことに、わたしがシャワーを浴び終わるまで、脱衣所の内鍵はずっとかかったままだった。透と大樹くんはリビングにいて、ネットで調べごとをしていたから当然のこと。恐らくわたしの裸には一切興味なかったのだろう。二人は互いに画面と向き合ったままで、だけど二人がなぜか仲良さそうに見えてしまう。わたしは小さく息をついてそのまま自分の部屋に戻ると、ベッドへばたんとうつ伏せになった。

 緊張しているのだろうか。……何に? 得体の知れない疲れだけが、身体に酷く残ってしまっている。
 今度こそわたしは大きく溜息をついた。

 だけどそんな暇さえないほど、また新たな不安の音に襲われたのは次の瞬間だったんだ。

「誰!?」

 誰もいないはずの静かな部屋に、何か叩くような鈍い音が響く。恐らくこのベッドの下だ。

 ゴキブリ? それにしては音が大きすぎる。
 ネズミだろうか? 大きさとしてはその方が辻褄が合うだろう。
 もっともどちらであっても決して嬉しいものではない。

 わたしは恐る恐る身体の体重をベッドに預けたまま、首を伸ばし、頭を逆さにしてベッドの下を覗いてみる。長く伸びた髪が床に垂れたせいで、冷たい触感が心臓目掛けて突進してきた。ひゃっと瞬間的におのろいてしまう。気を取り直してもう一度、薄暗くなったその場所をゆっくり覗いてみた。

 蛍光灯の灯りが届くのはベッドの下の三分の一程度まで。それから向こう側は完全に真っ暗闇の世界だ。

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コミケ C102 終わりました〜

コミケも無事に終わり・・・

私はちょっと前も書いたとおり、某薄い本を頒布していたわけですが、その売れ行きはというと、、、

blog.geeko.jp

・・・もう少し濃い内容を準備しておくべきだった(反省。
だいたいそんな感じです!!!!(どんな感じだよ〜〜!??

今回は、コミケ総括と、それにちなんだブログお引っ越し作業(『エーデルシュティメ』の今後)について書いていきます。

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エーデルシュティメ 003『学ラン男子の誤解と学ラン女子の青い思い出』

> prev: 002

「だ、だからごめんって。てかなんで風呂場の内鍵をかけておかなかったんだよ」
「かけたもん! ちゃんと鍵かけてたはずなのに、なんで勝手に開けるのよ!!」

 男子寮二号館、八九七号室。運悪く唯一の男子住民である大樹くんは、共同生活初日から覗きの嫌疑をかけられていた。思春期真っ只中の女子二人が暮らすこの部屋で、脱衣所の扉を躊躇なく開けるとは即刻追放!……と言いたいところだけど、残念ながらそう簡単な話でもなさそうなんだよね。
 わたしも上杉さんも内鍵がかかっていたことは確認済みだった。それなのにどうしたもんだか。

「やっぱり上杉さん裸を見たかったから、思いっきり開けて鍵壊しちゃったんじゃないの?」
「なんでそうなるんだよ!?」
「だって大樹くんも年頃の男の子だし、女の子の裸くらい興味あるでしょ?」

 ちなみに上杉さんは迷子の野良犬を威嚇するような目で大樹くんを睨み続けている。どちらかというと困惑という表情が伺えて、怒るという感情が欠落してるように見えるのは少し事情を確認したいとこだけど。

「第一、俺は上杉のこと女子とは思ってな……」
「っ……」

 だけど大樹くんのその不用意な発言に対しては、さすがの上杉さんも冷たい怒りの視線へと変わった。つまり上杉さんにその手の台詞は絶対禁句らしい。わたしも気をつけないとな。

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エーデルシュティメ 002『洗面所の扉と内鍵の意味』

> prev: 001

「でもまだご飯もできてないし、お風呂も先約がいるからどっちもダメなんだけどね〜」
「いや、そうじゃなくて!」
「ん〜? ひょっとして君、こういうの好きじゃないの? もう少し乗ってきてもらうと助かるんだけど」
「てゆか何をやってみたかったんだよ!? というか、お前は一体誰なんだ?」

 そもそも漫画のようなベタすぎる展開、本当にやるやつがいるとは。

「あ、それそれ。大樹くん、昨日パパから何も聞いてないの?」
「パパ!? 誰だそれ。そもそも俺が昨日会ったのは……」

 引っ越し屋のお兄さんと、寮長のおじさん、そしてこの学校の学園長くらいだ。入寮手続きでバタバタしたせいで、それ以外の人と話した記憶などない。

「だって大樹くん、パパの部屋に呼び出されてたって寮長さんからもそう聞いたけど?」
「パパの部屋ってまさか学園長室のことか? ……てことはお前、まさか?」
「てっきりパパから『よろしく頼む』みたいなこと言われたのかと思ってたんだけどな〜」
「…………」

 確かに言われた。こいつの言ってることは何一つ間違ってない。あろうことか辻褄が全て合ってしまう程度には。しかも俺の想像を遥かに超えすぎた、斜め上の展開に。

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エーデルシュティメ 001『桜の花弁と男子寮の中の女子生徒』

 春の光輝く風を乗って、桜の花弁がふわりと校門の前へと舞い降りた。
 入学式は今からちょうど一時間後。窓から外を覗くと、あどけない顔立ちでそわそわした素振りを見せる女子高生たちが、校門前に広がるピンク色の絨毯を歩いている。頼りなくも見える小さな身体は、勇気という目に見えない魔法を使って、緊張を少しずつ解きほぐそうとしてるのかもしれない。

 初めて入る教室に、僅かに大きく感じる机。
 無謀にも身体とそれらを比較して、己の未熟さを測ってみようと試みる。
 だが返ってくる答えは、何もない、無機質なそれ。

「よっ、大樹。俺ら高校入っても同じクラスだな」
「おう。よろしく頼む」

 中学の頃からの同級生である拓海へそう返し、結局何一つ変わってないのだと実感する。そもそも何を頼もうとしているのか、自分でもわかっていないのだ。

「相変わらず無愛想なやつだな」
「悪かったな……」
「でも大樹って学生寮組だろ? そんな態度じゃきっと妬まれるぞ?」
学生寮に入れたのなんて勉強した結果だ。妬まれることなんてないと思うがな」
「おいおい。そんな身も蓋もないこと言うなって」

 どうしても家を出たかった俺は、特待生しか入寮できないという学生寮へ入るため、がむしゃらに勉強した。だが拓海の指摘は一理あるとも思えた。学生寮に入れなかった生徒から見れば、こんな何も取り柄のない俺に対しても、意味なく妬んでるやつがいるのかもしれない。

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openSUSE 15.5 で CUDA & PyTorch を動かしてみよう

そもそもこの記事の趣旨とは?

お久しぶりです鹿野です。・・・半年ぶり??
その割にレイアウトは変わってるし、なにかやろうとはしてるし、結局なにもできてないし。。

で、今日の記事の目的なんですけど、、、

ぶっちゃけ、Geeko Magazine に載せきれなかったはみ出し記事です!

C102 2日目(8/13 Sun) 西地区 か-09a
サークル名: 日本openSUSEユーザ会

※頑張ってこの画像から脳内変換で薄い本の表紙を想像してみてください(ぇ

Geeko Blog » Geeko Magazine Special Edition 2023夏

で、今回鹿野はいつもの巻末(?)小説、及びそれにちなんだ Stable Diffusion の記事を書いたわけですが、真面目に全部 Stable Diffusion の使い方について書こうとすると、

openSUSE への NVIDIAドライバインストール方法が膨大なページ数になってしまうんじゃ〜!!

というわけで本ブログではその部分を補う形で記事を書くことにしました。
(もちろん Geeko Magazine からは本ブログへの導線をちゃっかり書いておきましたが。。)

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2022年、もっともお気に入りのアニメ!

あけましておめでとうございます!

コミケお疲れ様でした!!

コロナ禍の3回目のコミケでしたけど、だいぶいろいろと戻ってきた印象があります。
人の流れ的にも、売上的にも(?)

とはいえ、まだまだ感染者数が増えただの減っただのマスコミさんが騒いでいるのも事実で、それに振り回されて大変な想いをされてる方も多いのかと思います。
(正直、国民みんなが幸せになれるにはまだ遠くて、それに見合った政策が全然できてない!・・・と思うけど、ここで政治のことを書くのは筋違いかと思うのでこの辺りで。

とにかく2023年は、より多くの人が幸せになれる世の中になることを祈っています。

・・・はい。堅苦しい挨拶はこれくらいにしておいて、(本当は昨日書きたかったけど)今日は私が去年一番ハマったアニメについて書こうと思います!

そのアニメのタイトルはもちろんこれ。
リコリス・リコイル』ですね!

lycoris-recoil.com

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