幸いなことに、わたしがシャワーを浴び終わるまで、脱衣所の内鍵はずっとかかったままだった。透と大樹くんはリビングにいて、ネットで調べごとをしていたから当然のこと。恐らくわたしの裸には一切興味なかったのだろう。二人は互いに画面と向き合ったままで、だけど二人がなぜか仲良さそうに見えてしまう。わたしは小さく息をついてそのまま自分の部屋に戻ると、ベッドへばたんとうつ伏せになった。
緊張しているのだろうか。……何に? 得体の知れない疲れだけが、身体に酷く残ってしまっている。
今度こそわたしは大きく溜息をついた。
だけどそんな暇さえないほど、また新たな不安の音に襲われたのは次の瞬間だったんだ。
「誰!?」
誰もいないはずの静かな部屋に、何か叩くような鈍い音が響く。恐らくこのベッドの下だ。
ゴキブリ? それにしては音が大きすぎる。
ネズミだろうか? 大きさとしてはその方が辻褄が合うだろう。
もっともどちらであっても決して嬉しいものではない。
わたしは恐る恐る身体の体重をベッドに預けたまま、首を伸ばし、頭を逆さにしてベッドの下を覗いてみる。長く伸びた髪が床に垂れたせいで、冷たい触感が心臓目掛けて突進してきた。ひゃっと瞬間的におのろいてしまう。気を取り直してもう一度、薄暗くなったその場所をゆっくり覗いてみた。
蛍光灯の灯りが届くのはベッドの下の三分の一程度まで。それから向こう側は完全に真っ暗闇の世界だ。
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